細菌性食中毒の予防ための3原則というものがあります。
1.清潔=食中毒菌をつけない
2.冷却・迅速=食中毒菌を増やさない
3.加熱=食中毒菌をやっつける
というもので、家庭でもできる原則として食品衛生に関わる話題には必ず出てくる内容です。それに最近では、腸管出血性大腸菌やノロウイルスといった食中毒が、更には人から人へ感染するといった側面を持っていることから、「食中毒菌を持ち込まない」といった内容が追加され、4原則となってきています。この4原則にストーリーをつけると
・現場に食中毒菌を「持ち込まない」ためには、日頃の健康管理で自分の体調を確認しましょう
・そして万が一持ち込まれても、食品に食中毒菌を「つけない」ために現場を清潔にして、更に
は調理前には手洗いを行いましょう。
・それでも万が一つけてしまっても、食中毒菌を「増やさない」ために食品を冷蔵庫に保管す
る、調理後はすぐに冷やすかすぐに食べましょう。
・それでも万が一増やしてしまっても、食中毒菌を確実に加熱調理で「やつけましょう」
という展開になりますが、実は以下のようなイレギュラーも出てきます。
①もともと食材そのものに食中毒菌が存在している場合
例えば牡蠣にはノロウイルスが、牛レバーにはO157がいる、といったケースで、それは食材の特ですから、その食材を使った料理で食中毒を防ぐためには、原則3の「やっつける」しか方法はないです。それを考えると、生牡蠣がいかにリスクの高い食べ方であるかが判るし、牛レバーの生食が禁止になった理由も理解できるかと思います。
②感染力の強い食中毒菌の出現
サルモネラ・エンテリティディスなる名前の食中毒菌やキャンピロバクター、O157、更にはノロウイルスといった食中毒菌達は、食品中に少量でもいると食中毒になるほど感染力が高いのが特徴です。これを防ぐには原則1の「つけない」しか方法がありません。ここで注目です。①にも出てきた食中毒菌がいますね。そーなんです。だからやはり牡蠣や牛レバーの生食は、食中毒のリスクが高いのです。
③食品中で増えて毒素を作る食中毒菌がいる
これは前回のこの場で触れた内容ですね。
このように、食中毒を防ぐ原則を知ることで、調理における食材毎の注意点やリスクを減らす食べ方も見えてきます。これが、前回お伝えした「知識」であり、それを知らずに調理や製造を行う「無知」がいかに怖いかと思う次第です。
さて、この4原則、来年から制度化される「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の基本となる「衛生管理計画」の柱にもなっております。飲食店向けに出されてる手引書を引用して説明すると、
1.清潔:つけるな ⇒手洗いマニュアル
清掃マニュアル、洗浄マニュアル
冷蔵庫の中での交差汚染の防止
器具道具の使い分け
2.冷却:ふやすな ⇒冷蔵庫の温度管理
調理の中の冷却の管理(調理工程の管理:重要管理)
3.加熱:やっつけろ ⇒調理の中の加熱の温度管理(調理工程の管理:重要管理)
4.持ち込まない ⇒従業員の健康管理
原材料の受入管理
トイレの清掃マニュアル
このように、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」と言っても、特別なことを要求されているのではなく、昭和の時代から言われ続けている食中毒予防の原則が根幹にあるのです。ただ、「見える化」といって、「手順書を作って」、「記録を残していく」、とう作業が要求された点だけが、今までとは違っている点といえます。(実は以前からも「食品衛生法施行条例」の中には「手順書」や「記録」については記載されてはいたのですが・・・)