経済産業省から5月29日に、新型コロナウイルス対策としての次亜塩素酸水の空中噴霧に関しての通達が出されました。下記、URLから詳細が見られます。
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-3.pdf
要は、次亜塩素酸水を空中に噴霧しても効果が確認されてないよ、使い方を誤ると有害だよ、という内容です。何を今更・・・といった感が否めませんが、様々な観点から判断して、殺菌剤を空中に噴霧しても、浮遊するウイルスや感染症の原因菌を殺菌できるはずがないのに、私がこの業界に入った頃(30年位前)でも、そのような類の機械は病院や施設、そして食品工場に売り込まれていました。噴霧された殺菌剤の水滴と比べると、細菌の大きさは水滴の10~100分の1、ウイルスは10,000分の1の大きさです。ですから空中を浮遊している殺菌剤の水滴の隙間や合間を悠々と細菌やウイルスたちは浮遊している訳で、殺菌剤が細菌やウイルスにヒットする確率は非常に低いのです。更に、細菌やウイルスも生き物で、それを殺菌するほどの効果があれば、同じ生き物である我々にも何らかの効果があるわけで、それが健康被害につながるのです。
これらの商品を販売している会社や営業マンを敵に回したくはないので、ほんとはこの場でのコメントは避けたかったのですが、残念ながら経済産業省の通達が科学的にも根拠のある内容で、やっと国がそこに目を向けてくれたか、といった感じだったので、調子にのって(笑)あえてコメントしてみました。実は通達の中の、人体に対する健康被害はもとより、金属の腐食に対する注意喚起も大事な内容で、実は先月伺った弊社のお客さんの工場でも、次亜塩素酸水の噴霧が行われており、その際に機械や鉄の錆びには気をつけるよう話をしてきたところでした。それを売り込んできた営業マンはそんなことは一言も言っていなかった、とのことでしたが、往々にしてこの手の営業はマイナス面は言わずに、人の不安につけこんでプラスの面だけを全面に押し出して売り込んできます。私もサラリーマン時代には似たようなことをしてきたので大きな顔はできませんが・・・(-_-;)
まさに今は新型コロナに対する不安と恐怖の中で日常生活が行われています。その中で、少しでも安心を手に入れたくて、殺菌剤や身を守るための商品が売れていきます。でも、何度もこの場で書いているように、感染症予防の基本は手洗いと規則正しい生活です。環境を殺菌できる術なんてなくて、仮にあったとしても、そんな環境では病原菌と同じ生き物である我々も生きていくことは出来ないのです。だからこそ、病原菌とさえも共存することが我々がこの地球上で生きていくための大命題であり、残念がら病原菌に負けて命を落とすことがあっても、それは地球上の生き物としての我々の宿命と受け入れる覚悟がなければいけないのではないかと思います。
ちなみに、お客さんの勉強会や講習会で良く話しをする次亜塩素酸に関する話題に、ハイターとミルトンの話があります。ハイターは洗濯用の漂白剤でミルトンは哺乳瓶の消毒薬です。共に主成分は次亜塩素酸ナトリウムで、違いは濃度だけ、ハイターは5%、ミルトンは1%。ですから、ハイターを5分の1に薄めるとミルトンと同じ濃度になるので、ハイターで哺乳瓶の消毒ができるわけですが・・・あとは、皆さんの判断にお任せします。