以前このブログで、HACCPの危害分析を行う上で、食材はもともと生き物であったことを踏まえて理解することが大事だと書いたことがあるかと思います。植物は育つ過程で芽や根を食べられないように毒をつくるものがあります。それは例えばじゃが芋の芽のソラニン。それを人間が食べたときには吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまい等の中毒症状を引き起こしますので、当然じゃが芋を使った料理の際の危害となります。このように、危害を考える上では食材に対する理解が大事ですが、危害を考える以外でも食に対する理解が必要な場面があります。
先日お客さんと話していた時のことです。
「イヤー、この前お客さんからサバの塩焼きが脂っぽいとクレームがあってさ~」
本来サバを初めとして魚全般は、脂ののっているのが美味しいといわれているもので、それが「脂っぽい」とクレームになるなんて思いもよらない話でした。他では、塩素で処理していないレタスを食べたお客さんから、「レタスが苦い」というクレームを受けたという話もあります。
何度も書くように食材は本来生き物ですから、採れる(獲れる)時期により成分が変わってきます。それを「旬」というわけですし、それが脂ののりだったり、うま味の濃さだったりするわけで、それゆえに食材を理解して料理をする、加工をする必要があるわけです。
料理や食品を規格書といった書類の中で理解して、調理工程や製造工程もHACCPという衛生管理の名のもと、書類上だけで理解されていくと、先のような話が増えてくるのでは?と懸念される出来事でした。
食材を理解することにより、危害を理解するだけでなく、その食材の旬や本来のうまみを理解することにもつながるようなHACCPの取組みなれば、逆に食材への理解が深まるかと思います。皆さんが作るのは薬や餌ではなく、「美味しい」料理です。是非とも、そのような流れになって、先ほどのような不思議なクレームが少しでもなくなることを切に思う次第です。