衛生管理のイロハのイは、手洗いです。医療の現場でも、食品の現場でも、手洗いをしなければ作業は始まりません。では、手洗いは何のために行うのか?勿論、不潔な状態で様々な細菌を現場に持ち込まないためであり、それゆえ「除菌」という言葉に結びつくわけですが、では手指に存在する細菌にはどのようなものがあるか?そこを理解し、過剰な手洗い、過剰なまでの除菌対策を再考してもらえれば、と思います。
1.常在菌
これは我々の皮膚を守ってくれている細菌達です。つまり、この細菌達が居なければ 手荒れが起こり、外から付着する細菌達に皮膚を攻撃されてしまいます。皮膚に元々いる細菌達で、いわば我々の体の一部です。
2.通過菌
手指を使って様々な作業を行うことで手指に付着してくる細菌達です。つまり我々にとってはよそ者。通り過ぎていくよそ者なので「通過菌」です。そしてこれはいわゆる「汚れ」の中に潜んでいます。ウンチに潜む大腸菌やノロウイルス、食品に付着してくる様々な細菌達、土や砂に潜んでいる様々な細菌達、などがそれで、我々に攻撃を仕掛けるのを虎視眈々と狙っています。
つまり、手洗いで大事なのは「通過菌」を洗い流すことで、「常在菌」まで除菌するほどの手洗いは、逆に「通過菌」達の攻撃のチャンスを与えることにつながります。「通過菌」は名前の通りで、手指にいつまでも居座りません。ですから石鹸で洗い流すことが出来ます。そして「常在菌」は除菌しても除菌しても皮膚(毛穴など)から湧き出てくる細菌達なので、洗い流してもまた皮膚を守ろうとして出てきてくれますが、今の食品衛生の風潮は、それまでも減らそうとして石鹸の中に殺菌成分を入れている、とういう状況です。
汚れを落とせる石鹸で、正しい手洗いを行うだけで、通過菌は我々の手の上を通り過ぎていってくれます。前回書いた「限定的な手袋着用」を取り入れつつ、過剰なまでに除菌を意識した手洗いを一度見直してみませんか?