社長ブログ2021年04月05日

改めて、手袋の着用を考える

 

私がこの業界に入った今から30年近く前、食品衛生上の手袋着用は、

  ①手指に怪我がある人

  ②手荒れがひどい人

  ③最終製品を取り扱う作業を行う人

など、かなり限定的でした。そしてその後、カイワレ大根によるO157の食中毒を皮切りに、新しい食中毒菌が出現し、それと呼応するかのように食品衛生法の中に「HACCP」の言葉が現れ、それとともに食品流通業界ではメーカーに対して厳しいほどの規格基準を要求する状況が加速、海外との取引の中ではグローバルスタンダード(標準化)が推進され、そして過剰なほどのテレビコマーシャルやメディアからの情報に踊らされた消費者の安全・安心志向が高まってきたのでした。その約30年の中で、限定的だった手袋の着用が、いつしか「手洗い後は衛生手袋を着用して作業を行う」といったルールが当たり前になり、結局一日通して手袋を着用しているなら素手での作業とどう違うの?といった矛盾の中、「衛生」という名のもと、手袋を着用しないで製造や調理を行うと「不衛生」と見られるという風潮が主流となったのでした。

 20年近く前、六花亭の会長の言葉が六花亭の新聞広告に掲載されていました。そこに書かれていたのが「手洗い」についてと「手袋の是非」についてでした。要約すると、職人である以上、手洗いをしっかり行うのは当たり前で、その上で衛生意識をもって作業を行えば手袋を着用する必要はないのでは?という提言でした。手洗いは食品衛生の基本中の基本です。医療の現場でも手洗いが基本で、すなわち衛生管理は手洗いからスタートといえますが、食品と医療は求められる衛生度が異なるはずです。

 食品は口から体に取り入れるので安全であることが求められます。そして食べる人は安心して食べれるように作り手の衛生度を気にします。その結果、手洗い以上の安心のために「衛生手袋」が衛生管理の基本となってしまったのでしょう。手袋を履いたままハンバーグをこねて、その手で焼いたハンバーグを盛り付ける・・・お客さんは手袋を履いて調理をしているので安心します。でも、この作業の流れの正解は手袋を履いた手を洗う、もしくは手袋を交換して焼いたハンバーグを盛り付ける、です。その詳細な作業を確認せずに、手袋を履いている事実だけで安心する、という落とし穴があるわけです。コロナの影響で使い捨て手袋の値段が高騰している折、今一度、手洗いと手袋着用の現状を見直してみませんか?手袋を履いた手を洗うくらいなら、素手で作業をして手洗いを行うのと同じでは?お客さんは、手袋を履いている状況に安心するのではなく、こまめに手洗いをしているか、で安心する世の中になれば、手袋の着用は30年前の限定的な状況に戻れるはずです。

この記事を書いた人:小林樹夫

所属:代表取締役 担当:皆の社長(笑)

小樽の漁師町の生まれ
人生の前半を小樽、函館で過ごし、酸いも甘いも色々経験(笑)後半の人生は、死ぬまで札幌で修行の予定。
さていよいよ50代最後の1年、来年は折り返しの年です。頑固でありながらも、いつまでも柔軟な感性を失わない、しなやかな社長=親父=おやじを目指してます❗