1.産地偽装の歴史
今月の初め、熊本産のアサリが産地偽装を行っていたので出荷止め、というニュースが報道されていました。詳細は、もうすでに御存知かと思いますし、もし知らない方がいたらネット等で検索してもえらえば、すぐにヒットする話題です。実は今回この話題を取り上げたのは、4月からの食品表示法の改正による産地表示の義務化を控えているからであることと、産地表示の落とし穴をお伝えしたかったからです。その前に、ここ近年日本で起きた歴史的に大きな産地偽装の話題をひとつ。
今から20年前の2002年(平成14年)から2004年までの間で、雪印食品株式会社が安い外国産の牛肉を国産と表示して販売していた、という事件がありました。その当時は北海道のミートホープ事件(ウキペディアで調べられます)等、畜産業界では国中を驚かすほどの大きな事件が多発した時期でもあり、結局それらが引き金となり産地表示等の法律が改正されて今に至っているわけです。ミートホープも雪印食品も結局それがもとで会社は清算されています。今回のアサリの事件も、結局は中国産と表記するよりは国産と表記したほうが売れるという消費者意識を利用したものですが、そもそも牛肉と違い海産物、特に養殖の魚介類の産地には色々な例外規定があることも今回の事件の背景にはあります。つまり、ふたつの国で養殖された海産物は養殖期間の長い国が産地になる、というルールです。つまり、中国産のアサリを養殖途中に日本で養殖を行い、その期間が日本のほうが長くなると晴れて「国産」になるということが起きるわけです。今回の事件は、それを知りつつ期間が短い(ほとんど日本での養殖期間がなかった)のに「国産」にしてしまった、ということが原因ではありますが・・・さらに水産物の産地は、水揚げされた漁港で決まるという可笑しなルールもあります。つまり、同じ海域で取れた魚でも、日本の港に水揚げされると「国産」、中国に水揚げされると「中国産」・・・何を信じれば良いのでしょうね。
2.産地表示のこれから
先にも書いたように、今年の4月から食品表示法が変わり、加工食品の原材料表示の中で、一番最初に記載される原材料の産地を書くことが義務になります。食品事業に関わっていない方でも、日頃の買い物の中で知っておいて欲しい話題です。一番最初に記載されている原材料は、実は使っている原材料の中で一番重量が重い原材料なのですが、この記載のルールにもちょっとした例外規定が・・・
アメリカ産の小麦を使って日本のメーカーが小麦粉を造ったとします。その小麦粉を使って、パン屋さんが食パンを焼いて販売するに当たって表示を行うとします。その記載の仕方は
① 原材料名 :小麦粉(国内製造)、砂糖、ショートニング、脱脂粉乳、イースト、食塩
又は
② 原材料名 :小麦粉(小麦(アメリカ産))、砂糖、ショートニング、脱脂粉乳、イースト、食塩
小麦粉は小麦を粉にした加工品なので、産地を表記する場合は①のように、どこの国で加工されたかを記載することになっています。ただ、それだとどこの国の小麦を使ったかがわからないので、消費者への情報提供をもっと詳しく行おうとするメーカーは、小麦粉の原料の小麦の産地を②のように記載しても良いのです。さて、どっちの記載が正直か?というより、どっちの表示のほうを消費者が手に取るか?そんなことも気にしながら、4月
から買い物をしてみてはいかがでしょう?
まぁ、いずれにせよ、メーカーや生産者が正しく産地を記載してくれていることが
大前提ではありますがね(笑)